淡い夏が終わって

 すっかり秋めいてきて、サンダルをしまいローファーを出した。わたしは秋が近づいてくると憂鬱になる傾向がある。しかし、今年は秋の訪れをよろこんでいる。暑くてつらい夏だったというのもあるし、夏の間ずっと体調が悪かったのもある。それでも一番大きいのは、わたしの心にゆとりができたことだと思う。

 

 大学に入学してすぐ、ある講義の冒頭で「あなたがたは今18歳。人生の春が終わって夏が始まりますね。」とマイク越しに話す先生がいた。

 夏は、焦燥感があってきらいだ。始まる前はどんな夏にしようと期待に胸を膨らませないといけないし、終わるころにはしみじみと夏を振り返らないといけない。そういう、一種の成果物としての夏がきらいでしかたない。

 今年の夏は、規則正しく生活するにしても、だらだらと時が流れるのを待った。ゆったりとかまえて、成果物としての夏を作ろうとするのではなく、ただあるがままの夏を過ごした。そうしたら、ふっと秋が訪れた。季節の変わり目を悲しむでも、惜しむでもなく、ただそのままの姿の秋を迎えた。何の焦燥感も感じることなく、成果物としての夏を手に入れるでもなく、そのまんまの秋を感じている。