宮城岩手旅行記 3日目 盛岡②

 4泊5日の旅、3日目。

umprns.hatenablog.com

 この日は姉と合流して2人旅。前日にお互いの行きたいところをすり合わせて一緒に周ることにした。

 

 盛岡駅で巡回バスでんでんむしを待つ。中学生くらいの時に乗って以来の乗車だ。前に乗った時は100円だったのが120円に値上がりしていて、ここにも物価高やその他諸々の社会情勢の変化を感じる。

盛岡駅

 でんでんむしで今日の目玉、あさ開酒蔵へ。事前に予約をすれば酒蔵見学ができる。もちろん旅行の2週間前から予約をしておいた。最近は日本酒への興味が増すばかりだ。「日本酒の基礎知識」という本を買い、軽く勉強してから見学に臨むことに。

 本で読んだ知識を頭の中で思い出しながら、わくわくしながら酒蔵見学の受付をする。

 ついに酒蔵の中に入る。入ってすぐに、沢山の賞状やトロフィーが飾られている場所があった。日本酒には様々な品評会があり、それらでいい成績を収めた結果らしい。中でも独立行政法人酒類総合研究所が開催する全国新酒鑑評会がすぐにあるらしく、案内してくれた蔵人さんは期待のような緊張のような面持ちで結果を待っているとのことだった。旅行から3週間後、結果は金賞。蔵人さん方は喜んでいるところだろうか。

 あさ開酒蔵には手作り醸造と機械醸造のふたつの設備があり、それぞれの部屋でどのような作業をしているか丁寧に説明してもらった。今は米作りの時期だから誰もいない部屋だったけれど、酒造りの時期になっても工場見学はできるのか…。実際に稼働しているところも見てみたい。

 本で得た聞きかじりの知識が肉づけされていき、実感に変化する。この瞬間を思い出しながら日本酒を飲んだら、またひとつ思い入れができるだろうと思う。

 酒蔵見学の後は、お待ちかねの試飲。気前のいい蔵人さんがどんどんと瓶を開け、気が付いたら12種類もの日本酒を試飲してしまった。

 無料試飲を一通りした後、有料試飲の純米大吟醸の生原酒と火入れ後のお酒を飲み比べをする。火入れをするとしないではこうも味が変わるのか、と食品加工の奥深さを実感する。火入れ前は香り先行で華やかな香りと軽やかな味わい。火入れ後は味先行でずっしりとしたアルコール感と米のうま味と甘みを感じるようになった。食品加工には一通り興味があるので、蔵人さんが目の前にいるのを忘れてすごい!楽しい!と大はしゃぎしてしまった。

 

 良心へのお土産に辛口の日本酒と春限定の日本酒を買い、ほろ酔いで酒蔵を後にする。バスセンターまでスキップしているような軽い足取りで歩く。

 

 バスセンターまで歩いた後、東屋本店の目の前にある豆と喫茶waltzへ。ここは姉がことりっぷで見つけた喫茶店。ラテアートが可愛いと言って向かったのに、暑さに負けて水だしアイスコーヒーを注文する。

水だしアイスコーヒー ケニア

 ここのコーヒー、今まで飲んだコーヒーの中で一番おいしいと思った。ケニアという豆の水だしアイスコーヒーは、ウッディなコクがあるのにもかかわらず、後味は苦みや酸味がなくすっきりしているという不思議なコーヒーだった。私のコーヒーの好みをそのまま体現しているようだった。

 店内でのんびりと過ごしていると、海外からの観光客のグループが訪れた。慣れない英語に店員さんはどぎまぎしていた。ニューヨークタイムズに盛岡が掲載されてから、海外からの観光客が多く訪れているようで、私が英語を喋れて手助けできたらよかったのになあ、と思っていたら、おもむろに英語が喋れる女性が現れて、スムーズな通訳を始めて驚いた。どうやらオーストラリアからの観光客だったようで、英語のニュアンスまで聞き取り日本人に説明できる聡明さに、姉とかっこいい…!と感激した。家に帰ったら私も英語の勉強をしようと思った。後日、東屋のTwitterを見たら、オーストラリアの観光客グループはわんこそばにも挑戦したらしい。何杯食べられたかな。

 

 でんでんむしに乗って材木町まで、光原社に向かう。光原社はもともとは宮沢賢治銀河鉄道の夜を出版した会社で、今は民芸品を取り扱うお店になっている。この日の材木町には静かな空気が流れていたが、光原社はなおいっそう荘厳な空気が流れている。数々の民藝品を眺め、その気迫に背筋が伸びる。目の前にある民藝品が使われている生活があるんだと想像すると、私のなんてことない生活まで愛おしく感じられてくる。

 

 お昼ご飯を食べていなかったので、お腹がすいていた。早足で地下道を通り、フェザンおでんせ館にある南部ビストロうんめのすへ向かう。岩手県紫波郡紫波町醸造している紫波酒蔵店の紫宙を注文する。

姉は「八重桜」という日本酒を

 お米のうま味、という宣伝文句のとおり、一口飲むと口の中にドカン!とうま味が現れる。味のあるお酒、という表現が一番しっくりくる。

 お腹がすいていたせいで、揚げ物ばかり注文した。鶏のから揚げ、皮えびのから揚げ、揚げ出し豆腐、だし巻き卵。おいしいお酒とおいしいご飯。お酒にも、カウンター席でゆったりお酒を飲む自分にも酔う。

 

 すっかり夕方になった。外を歩くと、盛岡の5月の風はまだ冷たい。川べりを歩いていたら、柳の綿毛がふわふわと舞っていた。