町のとごり

 乱高下の三寒四温に根負けして、気ままな起床。カーテンの隙間から差し込む光に誘われて、窓の外に一輪の梅の花を見つける。春。

 近所に渋い町中華を見つけた。マツコの知らない世界でやっていた町中華オムライスの特集を見て、食べたくなったのだ。Googleマップで”町中華”と検索する。ぱ、と検索結果が表示され、簡単にオムライスを見つけることができた。これでいつでも町中華のオムライスを食べに行ける。きっと、このお店に行くとき、私はたまたま歩いていてお店を見つけたんですよ、と気取って入ると思う。インターネットで見つけて行くなんて、いかにも観光客らしくていやだ。私はこの町に溶け込む存在になりたい。

 住み始めて一か月、生活は穏やかに続いている。風邪もひいたし、決まった時間にごみを捨てているし、住民らしさが出てきたような気がする。それでも、ふとしたときに自分がこの町の異質分子のような気になるときがある。帰っているのにいえに帰りたい。まだ私はお客さんで、ぽつんと独りぼっちだ。