フーセンガム

 4月になった。私は何も変化していない。

 最初の日曜日、就職した友達と会った。1週間で友達は学生から社会人になった。先週会った時には学生で、インドカレーを食べている今は社会人で。見た目は何も変わらないのに、どこか壁を感じてしまう。鬱陶しそうに、でもどこか嬉しそうに仕事の話をする友達を、こちらに引きずり込んでしまいたいような衝動が口をつきそうになるのを慌ててラッシーで流す。別に本当にそうしたいわけじゃない。ただ、ひとりになるのが怖いだけだ。

 3つのうち1つ酸っぱいフーセンガムを買い、ふたりで公園で食べた。酸っぱいのは友達が食べた。私は嬉々としてフーセンを作る。ブランコに乗った。滑り台を滑った。滑り台に貼ってある対象年齢のシールが目に入った。6歳から12歳。知らないうちに大人と定義される年齢になった。私はまだ、ひとりじゃ生きていかれないのに。

 べったりと甘いフーセンガムを嚙みながら帰路につく。時々膨らませてみる。散歩中のおじさんに見つかって、変な目で見られた。