まるいぴかぴか

 ぷわぷわと膨らんでいるスクランブルエッグみたいな黄色が好き。

 窓から入ってくる朝日に照らされて、もそり、と起きる。階段を降りて、キッチンに向かい、冷蔵庫からたまごを2個取り出す。ボウルにぱかりと割り入れ、黄身に箸を入れる。とろりと黄身が溢れ出したら、白身を切るように一生懸命たまごをとく。牛乳とチーズと塩こしょうを入れて、さらに混ぜる。ちょっとぬるいくらいに温めたフライパンにたまごを全部流し入れて、くるくると箸でかき混ぜる。そのうち、ぷわぷわとたまごが膨らんで、ホテルの朝食バイキングでいっそう光を含んでいるようなスクランブルエッグができる。

 小学生の頃使っていたクーピーは、黄色が一番短かった。なんの絵を描いても、最後は黄色のクーピーでフィルターをかけるように薄く黄色を重ねた。黄色を塗ると、絵がぴかぴかと光る感じがして好きだった。

 ぴかぴかにも色んな種類があるけれど、わたしは黄色のぴかぴかが好き。明るくて、まるくて、こわくないぴかぴか。丸の内にいるオールバックのサラリーマンの靴のピカピカはトゲトゲしていてこわい。

 ぷわぷわのスクランブルエッグをひとくち食べる。チーズとたまごの濃厚な風味が鼻を抜けて、身体の中にも朝日を浴びているような、ぴかぴかした気分になる。明るくて、まるくて、こわくないぴかぴか。これがあるだけで、わたしは今日もなにもこわがらずに生きられる気がするのだ。